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ALS患者さんの「SNSによる嘱託殺人」に思う [政治・経済・時事ネタ]

2019年11月に
SNSで知り合った難病のALS患者の女性から依頼を受けて
薬物を投与し殺害したとして、
嘱託殺人容疑で
仙台市泉区の呼吸器内科医、大久保愉一(よしかず)(42)と
東京都港区の泌尿器科医、山本直樹(43)の
2容疑者が京都府警に逮捕された事件は
大きな議論になっている。

私は、結論として
この2名の医師の行為は容認できない。

理由は「SNS」に尽きる。
亡くなった林優里さんという女性は
本当はどんな人だったのか、
その人格すべてを理解しようと思ったら、
SNSは、その一面だけを伝えているに過ぎない、
と思うからだ。

彼女が死を願っていたのは本当だろう。
1日のうち、23時間59分は
「死にたい」と思っていたかもしれない。
だけど、たとえ1分でも
「何とか生きていたい」
と思う時があったのではないか。

おそらく、まわりにいた主治医やヘルパーさん、
そしてご家族は
その「たった1分」を感じていた時があったはずだ。

そして、何とか、
少しでも長く、彼女が生を全うできるように
全力を尽くしておられたのではないかと思う。

彼女だって、それはわかっていたはず。
いやわかっていたからこそ、
周りに「犠牲を強いる今の自分」を正視できず
死を望んだのではあるまいか。

かの医師2名が本物の医師なら
正々堂々と、主治医やご家族の前に立ち
「患者さんは、かくかくしかじか、
 こういう経緯で死を望んでいます。
 私はたとえ自殺ほう助になったとしても
 その望みをかなえてあげたいのです」
と言うべきではなかったか。

その上で、
彼女の実生活を知る人々と
時間を尽くして議論すべきだったと思う。

そんな覚悟もないから、
「訴追されないなら引き受けますよ」
と逃げ道を用意し、
たった10分でこそこそと殺害し、
おまけに報酬まで貰ったのだ。

そして、
こんな行為が誰にも知られずに
着々と実行できてしまう
SNSの問題の深さを思う。

私は、こういう話が起きるたび
三浦綾子さんの自伝「道ありき」を思い出す。
結納という、人生最良の日に
結核を発症して、その後13年も療養することになる三浦さん。

何度も「生きていても仕方がない」と思う。
実際に自殺未遂も起こす。

その中で幼馴染の前川正さんがこう言う。
「生きるということは義務なのです。
 義務とは「正しい務め」なのですよ」
と。

今回も、ずいぶんと
「死ぬ権利」が言われたが
その根底には、
生きていくことの難しさが横たわっているからだ。

林さんが「生きるということは義務だ」と思えなかった
医療体制も残念でならない。
こんなことを書くと、
一生懸命に彼女を支えた
周りの主治医やヘルパーさんを責めているように聞こえるが
決してそんなつもりではなく、
もっと大きく、日本全体の問題だと思えてならない。

「役に立たないもの(=お金を生み出さないもの)は切り捨てていい」
そういう考えが、今の日本全体を覆っているように
思えてならない。

「生きることは義務、死ぬことは権利」
この意味をもう一度考えたい。

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結納の日に結核を発症、以後13年も寝たきりになる作者。
婚約解消、自殺未遂、そして新たな恋人の死・・・
そんな中で作者が「生きよう」と思えたものは何か。
最初は悲しみで、最後は喜びで泣けます。


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コメント 2

okaru

ひょうさんのご意見に賛同します。
嘱託殺人は罪なことなのに、分らなければと
報酬を受け取って行動に起こすなどもっての他です。
林さんはお綺麗な方ですね。
彼女も洗礼をを受けられていたらまた違っていたのではと
考えたりしました。さぞお辛い日々だったのかと
十分には想像できませんが。

三浦綾子さんの作品は、大好きです。
二十歳の頃に旭川に行った時、三浦さんのお家はどこかしらと
思いましたが、旭川の風景を見て三浦さんを親近感に思ったことを
今も思い出します。


by okaru (2020-07-27 12:00) 

ひょう

okaruさん、ご賛同いただき、勇気づけられました。
安楽死は、生きていたい人が
「私は生きていたい」
と力強く言える社会になった後で
実現できるものだと思います。

okaruさんも旭川に行かれたことがあったのですね。
今では「氷点の街」として有名になりました。
by ひょう (2020-08-02 17:57) 

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