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渡せなかったバレンタイン [恋愛の話題]

むかし、一度だけ、
バレンタインデーのチョコレートを渡せなかったことがある。
相手は、進学塾の先生だった。

あの日は2月13日で、
私はK大学(大阪・第2志望)とK女子大学(京都・第3志望)の
両方の合格発表をその日に控えていた。
まだインターネットも個人情報保護も携帯電話もない時代、
合格発表は、合格者番号が堂々と、
大学内に張り出される方式だった。

当日10時、母がK女子大へ、私がK大へ発表を見に行き、
12時、河原町四条の阪急百貨店前で落ち合うことにした。

そして、12時。
「ひょうちゃん!」
「お母さん、K大、受かってた!」
「K女子大も受かってたえ!」
「良かったぁぁぁ!!」

今、こうして書いているだけで、
あの頃の幸せな得意げな気持ちがまざまざと蘇る…。

pen_naku.gif (うれし泣き…)

母と食事をして、地元の駅で母と別れた後、
私はまず、進学塾へ向かった。
合格の報告をするためである。
その時、私は
ちょっと高い小さなチョコレートを鞄に忍ばせていた。
高3クラスの担任だった先生に渡そうと思ったのだった。
セリフもちゃんと、頭の中で考えていた。

「先生! K大とK女子大、受かったよ!」
「おお、ひょう、良かったな!(大振りの握手を交わす)」
「で、先生! これ」
「お、チョコレートやんか」
「お世話になった御礼です!」

うん、これでいい。
  

   
進学塾に着いた。1階の講師の先生の控え室へ向かう。

「先生! K大とK女子大、受かったよ!」
「おお、ひょう、良かったな!(大振りの握手を交わす)」

ここまでは、思い描いたとおり。
そのあとが違っていた。
Y美ちゃんが、部屋に座っていたのだった。

「ひょうちゃん、受かったの? おめでとう」
Y美ちゃんはちゃんと笑って私に言ってくれたけど、
事情は一目でわかった。
先生が言う、「Y美は、ダメだったんや」
「あの…(Y美に)残念だったね…」
「うん」

Y美はしっかりしていたけど、大変なことになっているのは
さすがの私にもわかった。
Y美は、第1志望だったK女子大、第2志望、第4志望、と
全部落ちていたから。
「Y美よ、第3志望のKG短大は、(試験は)まだだっただろう?」
「はい、16日です」
「ひょう、おまえもあそこに願書出してたよな」
「は、はい」
第4志望の学校だった。
「おまえ、もう、受験するなよ、いいな」
「はい」

そのまま、挨拶もそこそこに私は帰った。
チョコレートは、もちろん、持って帰った。

今、思い出しても、
あの時のY美ちゃんがどんな気持ちだったかと思うと
胸がふさがる。
3校受験して、全部不合格。
すべり止めと思っていた第4志望まで不合格。
そこへ、自分が第1志望にしていた大学へ受かった私が来た。
しかも、そこへ私は行かない…。

もし立場が逆だったら…
私なら、あの時、笑って「おめでとう」と言えただろうか?
Y美は、偉かった。

そして、もちろん、
人生は出た大学で決まるわけはなく、
Y美は、その後、すてきなご主人と出会い結婚、
2児に恵まれ、幸せな生活を送っている。

かくいう私は、まだ独身、子どももなし。

あ、でも、私も幸せだけどね![わーい(嬉しい顔)]

  
  
  




あれから、もう、ン十年も経ったのか。
光陰矢の如し、である。
  
  
  
  
  


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コメント 2

rei

nice!^^
by rei (2011-02-13 23:44) 

マルコメ

複雑ですね。。。


オイラも一杯受けて落ちて、
希望外の大学に行きましたから。。。

でも、
今はステキな奥さん貰って無いし、当然子供もいないし、
高年収でもないし...

胸張って「幸せ」とは云えんし...
(コメント書いてて自分自身で暗くなってきた。。。)









幸せって何?



やっぱり「ポン酢醤油のあるウチ」なのかな?
σ(^_^;)...

by マルコメ (2011-02-14 01:21) 

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