SSブログ

インボイス制度がやってきた(概要) [税務会計の話題]

テレビでさんざん宣伝しているから、もう皆さんご存じだろう。
2023年(令和5年)10月から
消費税のインボイス制度が始まった。

ものすごくアバウトに例で説明すると、こういうことだ。

「ママヒロコ株式会社」はおしゃれな雑貨を扱う大手販売店である。
売上高(税込)は1億1,000万円。
仕入れ先は3社。
「マルコメ株式会社」から税込3,300万円、
「クシイコーポレーション株式会社」から同2,200万円、
個人商店「アトリエひょう」から同330万円である。

マルコメ、クシイ、ひょうの消費税の控除はいったん無視して
ここはヒロコとひょうの関係だけ見てもらいたい。

図にすると、こうなる。

20230917_invoice1.jpg

勘のいいひとなら、気づくであろう。
「あれ?
消費税の総額は1,000万円でしょう?
控除後、
ママヒロコが470万円、
マルコメが300万円、
クシイが200万、
合計970万円・・・」

そう、ママヒロコはひょうを含めたすべての仕入を
消費税額控除として引いて470万円を納付しているが、
(これはインボイス前は正しい経理である)
ひょうが免税であるため、ひょうの分30万円は納められない。

それが「インボイス制度」開始後はこうなる。



インボイス開始後、
ママヒロコとマルコメ、クシイはインボイス登録事業者だが
ひょうは登録をしていない。

すると、ママヒロコはひょうの分を仕入れ税額控除できない。
20230917_invoice2.jpg

マルコメ、クシイ、ひょうは変わらないが、
ママヒロコは「ひょうの分の消費税」をかぶる形になり
納税額が増える。

ママヒロコの社長は悩むであろう。
「アトリエひょうから仕入をしていては、
 納税額が膨らむわ・・・。
 しかし、今いきなり仕事を切っては、うちもひょうさんも困る・・・」

しかし、ひょうだって悩んでいる。
「このままでは、ママヒロコさんにご迷惑が・・・
 じゃあ、うちもインボイス事業者になろうか」

で、ひょうがインボイス事業者に登録したのが、こちら。
20230917_invoice3.jpg

ママヒロコさんの納税額はインボイス制度が始まる前と同じ。
だけど、ひょうの納税額は30万円増える。


実際には、どちらにも
制度開始後3年間は仕入の80%は控除を認めるなどの規定があり
免税事業者からの仕入が即、全額控除できないわけではないが
これは、実際には始まってからも大混乱をきたすであろう。

実際、うちの事務所にも
開始前1か月を切ったのに、今から
「インボイスの登録手続きをしてくれ」
というお客様が数件、出た。
いずれも同じことをおっしゃった。

「取引先のA社さんから、
 『インボイス登録してくれないかなあーー』
 と言われまして。
 いえ、無理強いされたわけじゃないですけど、
 それが本心ですよね・・・。
 お世話になっているので、断れないです」


インボイス制度は、今まで見てきた通り
ある意味、
消費税全額を納めさせる制度である。

消費税は平成元年(1989年)4月の導入までに
さんざんスッタモンダがあり、
かなりいびつな形でスタートされた経緯がある。

今回はそれを是正する措置であり・・・
とまで言うと言い過ぎだが、
「インボイスは死活問題だ!」
と叫ぶ個人事業者をTVなどで見ると、
(いや、あなたが払わない分は、
 取引先さんが払ってくれることになるんだよ)
と、ちょっと思う。


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:マネー

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。