その衣服は経費になりません：ひみつ日記～道ありき～：SSブログ

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その衣服は経費になりません　[税務会計の話題] [編集]

今年もやっと、確定申告が終わった。

毎年面白いネタがあがる確定申告。
以前は「心太」という名前の子どもがいたり
（意味を知らない親がバカ）
医療費控除に愛犬の動物病院の領収書が混じっていたり。
（もちろん除外）

今年は、やっぱ、これだね。

ある個人事業主の長女サオリさん（仮名）。
父親の仕事（小売関係）を手伝っている。

一昨年、父親の仕事の領収書の中に
彼女の「Tシャツの領収書」が混じっていたことがあった。
監査担当者のＡクン、
「お父さんの店で着ていたことにしてあげよう」
と言って、父親の事業経費に入れ込んであげた。

ブランド品のTシャツではなく、
確かに現場で着そうな品だったから
万が一、税務署に突っ込まれても、これなら大丈夫だろう。

すると、経費に入れてもらえて嬉しかったのか(？)
サオリさん、昨年は
「トレーナーの領収書」も経費として送ってきた。
「ま、冬ならトレーナーも着て、店に行くでしょう」
と、優しい監査担当者のＡクン、
これも事業経費に入れ込んであげた。

そして、今年。
「…何を考えてるんだ、あの人」
優しい優しい監査担当者のＡクンが、シブい顔をしている。

　　　
「どうしたの？」
「また、衣料品の領収書があった、サオリさん」
「ああ、去年は、Tシャツの領収書があったよね」
「トレーナーです」
「どっちでもいいやん。で、今年もなの？」
「今年はこれ」

領収書を見せられて、私も絶句。

「これ…」
「何を考えているんだろう、恥ずかしくないのか、20代の女性が」
「うーん」

確かに、これを父親の仕事の
交通費や通信費、消耗品費の領収書の中に入れておく神経はすごい。

ワコールのブラジャーとショーツ（パンティ）のセットだった。

Ａクンはプリプリしている。
「いくら何でも、こんなもの、
　事業経費になるわけ、ないじゃないか。
　そんなことくらい、わかりそうなものなのに」

いったい、サオリさんは、どういうつもりで、
こんな領収書を入れたんだろう？
費目別にきちんと小分けされた領収書の束で
間違って入ったわけがない。

彼女が、明らかに自分の意志で、この領収書を入れたのだ。
Ａクンの目に留まるのを承知で。

Ａクンはプリプリとふくれていたが、
私は女性なので、サオリさんの気持ちがちょっとわかった。
Ａクンより5歳年下で独身のサオリさんの気持ちが。

そう言えば、サオリさん、
昨年夏に、Ａクンあてに
某神社の「学業御守」を送ってきてた。
「もうすぐ試験ですね、頑張って下さい」の手紙つきで。

なぜ、そんなことを私が知っているかというと
実は、Ａクンから相談を受けたからだ。
「この手紙は…ちょっとビジネスからずれてる気がして」
「そうね。便箋もキャラクターもの…」
「お守りって…ぼく、無宗教なんですよ」

困った顔をしていたので、
お守りのほうは私がいったん預って、
試験後に京都の某神社へ返却した。
（こんな仕事もしているから、私は忙しいのだ☆）

おっと、話がそれてしまった。

ブラジャー・ショーツの領収書は、経費から外されて
「経費対象外領収書」の袋に別に入れられた。
その袋は、確定申告書の控とともに
彼女の父親宛に郵便で返送された。

話はそれだけである。

お客様というのは、いろいろな人がいて
「妻に買ったスイートテンダイヤの指輪」
や
「孫が生まれたので買ったビデオカメラ」
まで、経費に入れろと言われることがある。
それに比べれば、1万円弱の下着セットの否認など
ささいな、かわいい話である。

が、
来年もまた、彼女は
今度はトリンプあたりの領収書を送ってくるような気がしてならない。

私の考えすぎならいいけど。