新型コロナ 同居でも独り

新型コロナウイルスはますます猛威を振るい、
私の市でも数人の感染者が出ている。

そんな中、母が
「マスクだけどね、
　ヤマダさんに10枚ほどあげていい？」
と言い出した。

私はたぶん、
ちょっとイヤな顔をしたと思う。

確かに、マスクはまだ我が家にある。
たたし、それは、
私が血のにじむ努力で手に入れたものだ。
参照：「新型コロナ　6,114円のマスクを買った」

我が家と義妹一家3人の計5名のためにと
べらぼうな価格に目をつぶって
買いこんだのだった。

第一、ヤマダさんは、
息子さん一家との
2世帯住宅に住んでいる。
この息子さん（ヤマダくん）と私は小中学校で同級だった。
だから、正直に言って、
「それは、ヤマダくんが何とかするでしょう」
と思った。

そして、母にそう言った。

　
母が言うには、
「あんたの言うこともわかるけど、
　あそこは息子さんとこと折り合いが悪くて
　普段は全然、口も利いてはらへんらしいわ」
だそうだ。

さらに、ヤマダさんは今、足が悪くて
マスクを買うために長時間並んだりはできないらしい。

「そうなの？」
「だから、ね、ちょっとだけ分けてあげて」
「わかった」

けっこう、ショックだった。

なぜなら、私自身、
ヤマダくんのことは、昔のイメージしかない。
ヤマダさんのことも、やさしいお母さんと思っていた。

だから、2世帯同居にもかかわらず
親子が断絶しているなんて、
そんなドラマみたいな話、
「ヤマダくんと、そのお母さんに限って」
ないと思っていた。

でも、世の中、そんな
「同居していても、独り」
いう人は案外多いのかもしれない。

話をマスクに戻すと、
たかが10枚のマスクである。
2週間も経たずに無くなってしまうだろう。
ヤマダさんは、1枚のマスクを
熱湯で洗って、再使用しているそうだ。
「せっかくいただいたの、大事に使ってるの」
ということだ。

母はというと、
どうも他の人にも、「おすそわけ」をしたらしい。
今月初めに
60枚入りの箱を母に渡したから
そこから流用したようだ。

まあねえ、
いいことをしているのだ。
私も心を広く持たねば。

そして、
まだまだあると思っていた
マスクの数を確認せねば。

なんのことはない、
「同居していても、独り」
って、私のこと？？？

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